「おはよう!」
すると、イエスが行く手に立っていて、「おはよう」と言われたので、婦人たちは近寄り、イエスの足を抱き、その前にひれ伏した。(マタイによる福音書 28章9節)
ミャンマーの軍事政権弾圧や、もはやジェノサイドと化したロシアのウクライナ侵攻、2年を超えても終息が見渡せない新型コロナウィルス感染拡大と、世界中がいのちと平和の危機に脅かされています。そして、このような状況の中で、私たちは2022年のイースターを迎えました。つたない私の感覚は、「世界は今こそ夜明けを待っている」と心をノックしています。
マタイによる福音書28章のイエスの復活の場面は、夜明け前のまだ暗い中をマグダラのマリアともう一人のマリアが墓に行ったことから始まっています。この「暗い中」はイエスを失った二人のマリアの心の闇を示唆し、今の時代の「闇」と結びつきます。
その二人のマリアに、復活のイエスは声をかけます。「おはよう」(28章9節)。この「おはよう」はマタイだけに登場し、その原語「Καιρω(カイロ―)」は「恵み」を表すカイロスが語源で、「喜び祝う」を意味します。つまりこの「おはよう」は単なる挨拶ではなく、「もう泣かなくていい。悲しみは去ったのだよ。」との宣言なのです。苦しみや悲しみの中で「希望への出口」を示したのが、復活のイエスの第一声なのです。
「夜明け」は、「出口」です。闇が覆う社会は、今こそ「希望への出口」を求めています。2022年のイースターに、そんな思いを込めて、「おはよう!」を交わしましょう。
飯塚拓也(東アジアの和解と平和委員会委員長)