「イエスは涙を流された。」ヨハネによる福音書11章35節

吉高叶 
 
 大江健三郎さんがその講演の中で、シモーヌ・ヴェイユの言葉を紹介しておられます。
「人間にとっていちちばん大切な態度というものは何か? それは、他人に向かって、あるいは隣人に向かって『あなたはどのようにお苦しいのですか』と問いかけること」という言葉をです。そのように問うことが人間らしいことであるし、そこから人間らしい行動も始まっていくのだ、と。
 いま、新型コロナウィルスによる一連の出来事の中で、不安を煽られ痛んでいる皆さんに、また、ウイルスの感染以上に広がっているヘイトや排除に心を痛めている皆さんに、シモーヌ・ヴェイユの言葉をお借りしてごあいさついたします。
 みなさん、さぞお苦しみでしょう。いま、私たちが直面している同じ出来事のもとでも、きっとお一人お一人の苦しみがおありのはずです。あなたはどのようにお苦しみですか。あなたは何がお苦しかったですか。あなたを苦しめているものは何ですか。さぞお苦しいことでしょう。ひたすらに祈ります。ラザロの墓穴で泣き、弟子たちの汚れた足に触れ、「十字架から降りてみろ、そうしたら信じてやる」と嘲られても決してそこから離れることのなかったイエス・キリストが、いま、あなたのお苦しみに触れてくださいますように。主が、私たちそれぞれの苦しみに寄り添い共にいてくださいますように。そして、どうか、神にあなたのお苦しみが届き、神の慈しみが私たちに戻されますように。
 NCCにつながる私たちが、いま、この洞穴(墓穴)の中のような日本社会の現実の中にあっても、主イエスの命への呼び出しを受け、立ち上がる時をいただくのだということを共に信じていましょう。
 インマヌエル、アーメン、心から祈ります。
 

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