「主は御腕をもって力を振るい
思い上がる者を追い散らし
権力ある者をその座から引き下ろし
低い者を高く上げ
飢えた人を良い物で見たし
富める者を何も持たせずに追い払い」(ルカによる福音書1:51-53)

今年ももうすぐアドベントです。私は、これまで、様々な土地でアドベントを迎えてきましたが、どこにいても、南半球の暑い地でさえも、クリスマスを待望するこの時期が一年で最も好きです。普段は仕事と生活に追われるばかりですが、12月に入ると、クリスマスカードが届き、友人達のことを思い出し、いつの間にか少しずつ心が落ち着き、静寂さに包まれる待望の時を迎えます。
そんな心境とは逆に、日本の12月は師走と言われ、一年で最も慌ただしく、街中も賑やかさが増し、浮かれているようにも見える季節ですが、私にとっては内省の時です。

昨年に続き、今年も新型コロナウィルスの感染拡大に振り回され、一喜一憂させられた年でした。新型コロナウィルスがこの世に現れてもうすぐ2年が経とうとしており、この間、世の中はまさに逆転しました。コロナに関しては、経済的に豊かな者であっても感染リスクにさらされる点では共通しており、高所得国である欧米諸国でさえも大打撃を受けました。
その一方で、個人レベルで見ると、コロナ以前から存在していた格差不平等が顕在化しました。予期せぬ災害やリスクが襲ったとき、その困難をどう克服できるのかは、想定外の有事の際に使えるリソースや蓄えをどれだけ持っているかによることをコロナ禍は世に知らしめました。
一方、コロナ以前から長きにわたり存在していた不平等・格差の問題をコロナ禍が表面化させたことにより、大小様々な新たな支援の動きも生まれました。富める者と飢えた人の地位が逆転した訳ではありませんが、今、明らかに価値の転換は起きているのではないでしょうか。

牧 由希子 書記

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