NCC議長 渡部 信

クリスマスを迎える季節が参りました。クリスマスの最大の主題は、神の御子イエス・キリストが人間の姿をもってこの世に来られたということです。そしてこの世を、私たちを、愛されたということです。それはご自分の命を与えるほどに-。
今年10月、私は聖書協会世界連盟(United Bible Societies)の仕事でアルメニアを訪れました。東正教会(オーソドクシー)とオリエント正教会と共に、聖書協会を通して、聖書翻訳の働きを支援するための調印式でした。
301年、アルメニア王国はキリスト教を世界に先駆けて国教として定めました。アルメニア正教会は、西のローマ・カトリック教会から分かれた東正教会とは全く違ったオリエント正教会です。もちろん、カトリック教会も東正教会もアルメニアでは共存しています。アルメニアをはじめ、ジョージア、アゼルバイジャン、トルコ、イランなどコーカサス周辺の国々は常に、民族的、宗教的、政治的にも様々な軋轢の中で歴史を紡いできました。最近でもロシア正教会とギリシャ正教会の影響下、周辺国の東正教では分裂騒動が起きる事態となっています。この古い歴史を持つアルメニアでは、1900年ごろからオスマン帝国領内で少数民族であったアルメニア人が組織的に殺戮され、200万人が犠牲になったとされています。ナチス・ヒトラーの出現以前の民族虐殺(ジェノサイド)です。国民の半分以上が難民となり世界各国へ散りました。
私はジェノサイド記念館を訪れて、亡くなられた方々に心から哀悼の祈りを捧げました。人が人を家畜のように扱う残忍性はどこから生まれるのでしょう。イスラム教とキリスト教、キリスト教とキリスト教-。私たちの信仰は、分裂を生み出すのではなく、相互に平和を生み出すものであるべきです。そして愛するということは、赦すことでもあり、平和と和解の福音をもたらすことでもあります。このクリスマスの季節を迎えるにあたり、心からキリストの祝福をお祈りいたします。

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