記事一覧

地球温暖化対策基本法案で原子力発電を推進することに反対します

内閣総理大臣 鳩山由紀夫様

                地球温暖化対策基本法案で原子力発電を推進することに反対します
私たちは、地球温暖化が炭酸ガスだけによるものではなく、多くの学者が言っているようにもっと複合的な要素によって起きていることだと考えており、「温暖化対策のために火力ではなく原子力を活用しよう」というキャンペーン的な風潮に対しては大変疑義を感じています。
たしかに、空気中に炭酸ガスが増えすぎるのは良いことではないということも認識しています。しかし、原子力に頼ることは、それ以上に多くの問題をもっていると実感しているからです。以下、大きく二つの理由で、原子力発電を推進することに反対します。

Ⅰ 原発は炭酸ガスの抑制に寄与していません!

 電気事業便覧を基に原子力資料情報室がまとめた資料(原子力市民年鑑2009)によりますと、日本に於いて1966年に原発が営業運転を開始してからも、火力による発電量は増加し続けています。
 これは、原発は需要に合わせて出力を調整する小回りが利かないため、需要の変動部分には火力の補助電源を必要とするというのが根本的な理由です。
 更に、原発の大型化に伴い故障などの場合に備えて大型の補助電源が必要になり、これらを建設すると、何とか需要を生み出して電気を売らないと採算が合わなくなるというようなこともその理由となっており、悪循環を生み出しています。

 電力側は「発電時に炭酸ガスを出さない原発」などと宣伝していますが、原発は熱効率が悪く、膨大な量の温排水で海水を暖め、発電時でも海水中に溶けている炭酸ガスを空気中に大量に放出します。

 発電時以外にも、原発はコンクリ-トの固まりなので、これを建設するには膨大な石油を必要とし、ウラン燃料の発掘、精製、輸送、廃炉の処理にも石油を必要としています。それどころか、核廃棄物の処理、処分にかかるであろう更に膨大な石油の量は、電力会社ですら把握しておりません。これではとても「地球温暖化防止の切り札」などと言えるものではありません。


Ⅱ 仮に原発が炭酸ガスの抑制に寄与するとしても、次に述べる理由から原発の推進には賛成できません

1.日本に於ける原発の使用済み核燃料の放射能量は、広島型原爆の120万倍もあると言われています。これを数十万年にわたって安全に生物圏から隔離する技術を、人類は持ち合わせていません。
日本もやがて廃炉の時代を迎えようとしています。廃炉の放射能は使用済み核燃料ほどではないにしろ、量が膨大なのでその処分には子孫に大きな負担をかける事になります。
 現代の快適な生活のために数十万年にわたって負の遺産を子孫に残すことは、今に生きる人間として為すことではありません。

2.原発は定期点検などの際に被曝労働者を必要とします。彼らは正規従業員より弱い立場の下請け労働者が大部分で、通常人の被曝限度(年間1ミリシ-ベルト)の50倍の被曝限度まで働かせられ、累積被曝で発病しそうになると、放り出されます。彼らは使い捨て労働者として扱われているのです。

3.原発で作られた電気は都会に送られて都会の生活を豊かにしますが、原発は必ず地方の貧しい地域に補助金で釣られ押し付けられます。これは差別に他なりません。事故がなくても原発からは微量とは言え放射能を放出するので、住民は放射線障害の恐怖にさらされ、事故があれば真っ先に被害を受けるのは原発周囲の住民です。
特にひどいのは青森県六ヶ所村の再処理工場で、平常運転で原発の1年分の放射能を1日で環境に放出すると言われます。イギリスでもフランスでも、再処理工場の周りの汚染のひどさが明らかになっています。
「六ヶ所村は本州の北の果てだ」などと、のんびり構えてはいられません。放射能は食物連鎖などを通じて近い将来に必ず都会に住む人達の体内も汚染します。

4.日本の原発の特徴は地震地帯に建てられていることです。地球はこれから地震の活動期に入ると言われていますが、万一この狭い日本でチェルノブイリ級の事故が起きた場合、その被害は想像に絶するものがあります。
被爆者を収容できる病院も足りません。住居も、食料も足りなくなり、日本の国自体が崩壊する事態すら考えられます。

5.原子力発電はあらたな核武装の準備となる危険性があります。実際、安全性・経済性の面から全くメリットのない再処理工場をこんなにも動かしたがっているのは、そこで得られる核武装の材料が目的なのだと疑わざるを得ません。今日本は「核武装できない国」から「核武装できる国」になりつつあります。武器を捨てて、平和を実現させようとしている私たちの思いとはまさに逆行するのです。

 そのような中で「今から原発を推進する」というのは大きな方向違いです。手遅れになる前に、危険な原発から先ず廃炉にし、出来るだけ早く原発社会から脱却しなければなりません。
 私たちは改めて、地球温暖化対策基本法案で原子力発電を推進することに反対します。

2010年4月27日
日本キリスト教協議会
平和・核問題委員会委員長 平良愛香